エピソード2

定年後の物語

~骨形成術が支えた人工歯根と人工歯~

美容整形や審美歯科のビフォアー&アフターに出てくるのは、大体、映画俳優並みに美しい男女ですよね。しかも若い。でも、審美歯科には年齢制限はないんです。

老若男女問わず、実にたくさんの人がお口の悩みを抱えています。生まれつき歯並びが悪かったり、かみ合わせが悪かったり、むし歯になって作ったかぶせ物や入れ歯が合わなくなってきたり。


歯にとても苦労していたロンドン北部に住むフランクさん(64)のお話です。

「上の入れ歯が全く合っていませんでした。それ以来、家にひきこもるようになっていました」
今回、ハーレイ・ストリートで行われた芸術的なその治療は、彼の若かりし頃にはSF小説のような夢のまた夢の話でした。そして、はじめから自分の歯だったかのように仕上がったそれは、自分の殻に閉じこもってしまっていた彼を、再び外の世界に呼び戻したのでした。

 

≪フランクさんの新しいお口の構成≫

① 4つのチタン製のインプラント 

② インプラントに立てられた2本のゴールドの支柱

③ ゴールドの支柱についたクリップを支えとした入れ歯

 

使っていた入れ歯は合わず外れやすかったのですが、上記の様にインプラントのクリップでしっかり固定された入れ歯は、ぴったりと装着され、外れることはありません。
利点はまだまだあります。あごの骨に埋められたインプラントは、ものを噛む適度な刺激を天然の歯のように骨に与え、骨の再生を活発にします。従来の入れ歯では、噛んだ刺激が弱すぎて骨を再生するどころか骨の吸収を促進し、更に他の歯を失うことになってしまいます。
インプラントは、失った歯根を取り戻すという新しい方法です。ここ100年の歯科の歴史の中の最も優れた功績です。

フランクさんの治療には5カ月かかりました。しかし同じ治療でもあごの骨の状態によっては2、3カ月で終えることもできます。インプラントがあごの骨にしっかりと支えられ、新しい歯を問題なく機能させるために、時に骨の再生をじっくり待ちます。
フランクさんはこう言います。
「7年間、合わない入れ歯を使っていましたが、待った甲斐がありました。まるで自分の歯を取り戻したかのように快適です。」
フランクさんのあごの骨はほんのわずかしか残っていませんでした。インプラントの手術の前にCTスキャンを撮り、インプラントを植える部分の骨の様子を確認しました。そのスキャン画像は、レプリカを作成し、インプラントのポジショニングをあらかじめシミュレーションするときにも役に立ちます。
手術が始まりました。修復歯科のスペシャリストであるキース・コーヘン歯科医師は、まず歯肉を開け、実際の骨の高さと幅を確認しました。次に骨にインプラントを植えていき、途中、レントゲン写真を撮り、正しい方向と長さで植えられているか確認をします。そして、骨の再生を促すミネラルを挿入し、保護粘膜でミネラルが流れ出ないように骨ごと覆い、最後に歯肉を元通りに縫い閉じます。
手術の後、フランクさんは今まで使っていた入れ歯を、術部が回復してくるまで使います。

さて、金属をあごの骨の中に埋め込んで、問題は本当にないのでしょうか。コーヘン医師はこのように説明します。
「たしかに、インプラントや本人のもの以外の骨のミネラルが、自分のあごの骨や歯肉の中に入ってくるわけですから、患者さんは多少の違和感を覚えます。」
でもフランクさんは、
「この変化は私の将来のためのものです。全く不安はありませんでした。ある時突然魔法をかけられて自分の歯で噛めるようになるなんてことはありませんからね。」
「この治療は、私に人生で一番価値のあるものでした。歯を失って初めてその価値に気づきました。歯がないと顔面がへこんでしまったかのように感じるんです。治療費は8000ポンドと決して安いものではありませんでしたが、それだけの価値は充分あります。」
コーヘン医師は言います。
「インプラントは、少数の歯を失ったケースにも用いられますが、すべての歯を失ったケースに、より利点を感じられます。驚くべきことに、イギリスでは60歳以上の約30%が自分の歯をすべて失っています。インプラントの成功率は年齢によるものではなく、身体の健康状態に左右されます。例えば糖尿病や喫煙が成功率を下げます。もう歳だからとあきらめないで、歯科医師に相談してみてはいかがでしょうか。」

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